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  2. 交感神経の走行と解剖
  3. 局所麻酔薬の基礎知識 ~リドカイン lidocain~
  4. 降圧薬の使い方
  5. 多汗症について
  6. ジギタリス製剤の基礎知識
  7. IVH必勝法~鎖骨下静脈編~
  8. 心室肥大(Ventricular Hypertorophy)
  9. NSAIDsによるCOX-2阻害について
  10. アスピリン

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研修医宿題

ジギタリス製剤の基礎知識

山田 圭吾

【ジゴキシン】

(作用)

 心筋の収縮力を高める(強心作用),房室伝導の抑制.

(適応)

 心不全(急性・慢性いずれも含むが主に慢性期)。頻脈性上室性不整脈(心房細動や心房粗動)のレートコントロール.

(治療域)

 0.6~2.0ng/ml(1.5ng/ml以下で管理する)
(投与量)

 静注;初日1~3A(0.25mg)様子を見ながら追加.維持量は1A/日.
  経口;腎機能正常の70歳未満 1T(0.25mg)/日 
     腎機能正常の70歳以上 1T(0.125mg)/日

【作用機序】

 ジギタリスは心筋細胞膜にあるイオンの出し入れに関与するNaポンプ(Na/K-ATPase)に作用する。このポンプはNaを細胞外に押し出すことと、Kを細胞内に取り入れることがセットになっており、ジギタリスが投与されると細胞内ナトリウムが増加してくる。ところで、細胞内外のNa濃度勾配(細胞外が高い)に依存してナトリウムを細胞内に、カルシウムを細胞外に押し出すNa/Ca交換機構というシステムがある。ジギタリスにより細胞内外のNa濃度勾配が小さくなると、Na/Ca交換機構が活発でなくなるため細胞内にカルシウムが蓄積する傾向となる。細胞内Ca濃度は収縮力を決める大きな要素であるため、ジギタリスはこうしたステップを経由して心筋の収縮力の向上に寄与する。

【副作用】

(1)ジギタリス中毒(不整脈・消化器症状・視覚症状・神経症状):ジギタリス中毒を促進する因子として低K血症がある。それは、KがジギタリスがNa/K-ATPaseに結合することを阻害するイオンであることによる。ラシックスの併用時には注意を要する。
(2)高度の房室ブロック

【有用性】

 最もよく使われるジギタリス製剤はジゴキシンである。腎経由で代謝排泄されるので、腎機能が低下している患者ではジギタリス中毒をまねきやすい。近年の報告では、ACE阻害薬、利尿薬、ジギタリスの単独あるいは併用での予後を比較すると、ジギタリスが投与されることのメリットは明らかに存在することが明らかとなった。ただし、生命予後については顕著ではなく、心不全の増悪の頻度が減少することがおもな点であった。さらに、より心機能の低い患者群の方が、また非虚血性疾患の方が、治療のメリットが大きいことも明らかになった。

【具体的な使い方】

[Case1] 慢性心不全

 原則として急性心不全にはジギタリスは使用されない。ドブタミンやドパミンのようなカテコラミンによる治療を優先する。心房細動や心房粗動があり、心機能の抑制なしに心室レートを調節したいときに用いられることがある。

[Case2] 急性心不全

 しばしば経口投与薬の一つとなる。ただし、ACE阻害薬や利尿薬などと併用することが必要である。高齢であれば心機能が落ちているはずという前提で、何も考えずにジギタリスが単独で投与されていることがある。もし心不全があるなら必ず他の薬剤も使用されるはずであり、ジギタリス単独投与は心不全の病名のもとに選択されるべき治療法ではない。

[Case3] 慢性心房細動や心房粗動の時のレートコントロール

 房室伝導の抑制が必要な患者に対するジギタリス投与は、しばしば不十分な効果しか得られない。そのため、心房細動や心房粗動のレートコントロールはβ遮断薬やベラパミルを必要とすることが多い。ジギタリスを心房細動や心房粗動の患者に投与しても夜間や安静時の心室レートのみ低下させ、動悸感や胸部不快感の原因となる活動中のレートはあまり下げてはくれない。β遮断薬やカルシウム拮抗薬が使用しにくい症例、あるいはこれらの薬剤でコントロールが不十分なときにジギタリスが使用される。例えば…
    ジゴキシン1T+テノーミン25mg 1T
    ジゴキシン1T+セロケン40mg(20mg×2)
    ジゴキシン1T+ワソラン4T

[Case4] 発作性心房細動

 基本的に、ジギタリスに心房細動自体を停止させる作用はない。発作性心房細動のレートコントロールを目的としたジギタリスが収縮力の改善や自律神経系への影響を介して、結果的に心房細動を停止させたかのような印象を与えることはある。発作性心房細動の予防を目的としてジギタリスを投与することは一般的には勧められない。

【備考】

 ジギタリス製剤にはジゴキシンの他にジギトキシンもある。ジギトキシンは肝代謝性の薬剤であり、この観点から腎不全患者ではジギトキシンの方が使いやすい場合がある。もちろん、腎不全があってもジゴキシンの量を減らすという方法もある。またジゴキシンが速効性であるのに対して、ジギトキシンは遅効性であるという違いがある。

【参考文献】
循環器治療薬ファイル 村川祐二
メディカル・サイエンス・インターナショナル  p.177-183


September 27, 2002

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