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  4. 降圧薬の使い方
  5. 多汗症について
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  8. 心室肥大(Ventricular Hypertorophy)
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  10. アスピリン

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研修医宿題

心室肥大 Ventricular Hypertorophy

本間 幸恵

病理

心室肥大は一側の心室に過大の負担をかけるような病的な過程によっておこってくる。後になって種々の程度の心筋線維症が、特に心内膜下筋層に発生しうる。

肥大型心電図波形を生ずる解剖学的、生理学的異常.

心電図上の心室肥大型は次のような原因による

A,心筋の厚さの増加

高電位は心室壁の厚さと全心筋量と相関すると考えられている。しかし心エコー所見ではこれらの因子間の十分な相関は示されていない。電位の増加の理由は明確にはわかっていない。肥大した筋の活動電位は正常であり、肥大した心臓の単位筋あたりの細胞数は増えていない。体表面の増大して記録された電位はたぶん起電力の投影が幾何学的に変化されることに関係するのであろう。

B,興奮伝導の遅延

心筋層の肥厚により伝導の遅延と変化を生じ、これがQRS群の幅を増す。通常は0.12秒を超えないが時に越す場合がある。これはまた心筋興奮時間(VAT)を延長させる。

C,心内膜側の変化

ST部の低下は、心外膜側電位を反映する誘導に見られる。これはおそらく初期には虚血性、後に線維化する心内膜側の変化によるものであろう。

D,再分極における変化

再分極の変化によって高いRを記録する誘導のT波は逆転する。この逆転は一定のST間隔の後に始まるのが特徴で、非対称的である。逆転は一定のST間隔の後に始まるのが特徴で、非対称的である。逆転T波は浅いことも深いこともある。

心電図上の基準

肥大した心筋の心外膜側面を反映する典型的な波形は(1)高いR波、(2)QRS間隔の軽度延長、(3)心室興奮時間延長、(4)ST部の低下、(5)T波逆転である。心腔内電位、または反対側の肥大していない心室上におかれた導子から記録される電位を反映する誘導は(1)深いS波(またはQS波)、(2)ST部の上昇、(3)上向性のT波をみる。

心室肥大の診断に関しては、上記の基準がすべて必要というわけではない。

心室ストレイン Ventricular strain

心室ストレインという語は、心電図上で上に述べたようなST部とT波の異常のみを示すものに対して用いられる。これは意義に乏しい術後であるが、伝統的に使われている。その心電図上の定義は物理学者や心臓生理学者のいう[strain]ということと同じではない。

 臨床上は、この語は心室筋に起こる急性、かつ、おそらくは可逆的な変化を記すのに用いられる。

 心電図学的所見と解剖学的変化との相関性は、それほど深くない。一定の心室肥大のある患者で、心電図上は、非特異的なSTとT波の変化のみを示していることもある。また、臨床的および解剖学的に、急性心室ストレインの所見を示す患者に、異常に高いR波を示すこともある。不完全(あるいは完全)脚ブロックが臨床的に急性心室ストレインの心電図波形であることもある。

 肥大やストレインを記載するのにより多く受け入れられる用語は心室過負荷(ventricular overload)という用語である。

左室肥大のポイントスコア表

3-3-1RV6>2.6(3.0,2.5)3.0,2.5mV3
3-1-2RV5>2.6(4.0,3.5)4.0,2.5mV3
3-1-3RI,II,III,aVF>2.5(3.0,2.5)3.0,3.0mV2
3-1-4RaVL>1.2(1.5)2.0mV1
3-1-5|QV5|<|QV6|でQV6<-0.5mV2
3-3-1RV6+|SV1|>3.5(5.0,4.0)5.0,4.0mV3
3-3-2RV5+|SV1|>3.5(6.0,5.0)6.5,5.0mV2
3-3-3R1>1.5(2.0)2.5mV2
3-3-4RV5+|SV1|>5.0(6.0,5.0)6.5,5.0mVでRV5≧3.0(3.5,3.0)3.5,3.5mV3
2-1-1-60゜≧軸>-90゜1
2-1-2-30゜≧軸>-60゜1
2-1-3-5゜≧軸>-30゜で11才以下1

高電位(左室に対する誘導) HIGH VOLTAGE(LEFT VENTRICLE)

左室肥大のポイントが4、5点の場合

病的意義

1. 左室側の電気変化が普通より大きく記録された状態。
2. 左室側の起電力が大きくなったことを考えなければならないが、無力型の体型や扁平胸のために胸壁と心臓の距離が短くなっているために、波高が大きくなっていることを考えなければならない。
3. 年齢によっても基準値が大きく違っているので注意する。

左室肥大 LEFT VENTRICULAR HYPERTROPHY

病的意義

1. 単に左室肥大による左室起電力の増加だけでなく、心筋虚血を疑わせる所見、あるいは虚血、荷重(ストレイン)の所見を伴っていて、単なる左室肥大を思わせるHighRよりも進行した病状を持っているものと考えられる。
2. 心筋の虚血は、冠動脈硬化によるによる内の狭窄の場合もあれば、肥大した心筋を養うためには、より多くの冠血流が必要になるが、それをまかないきれないという因子も関与していると考えられる。

< 参考レポート>

スポーツによる心肥大

 スポ-ツ心は長期間にわたる激しい運動をしたスポ-ツ選手の心臓が大きい事をいい、持久力を要する運動種目の選手に比較的多いが個人差も大きい。動的運動能力を規定する大きな要因の一つは最大酸素摂取量と末梢での酸素利用能による酸素輸送系機能であるがスポ-ツ心では前者の能力が高い。スポ-ツ心は運動時に最大酸素摂取量の増加の他に1回拍出量増大、最大運動時の心拍数、血圧の減少、安静時の徐脈と血圧下降傾向、運動後の循環系変化の早期回復等の特徴があるが高血圧に見られるような病的肥大である代償性肥大とは異なり適応性の(生理的な)肥大であって心筋の毛細血管数と線維の太さは増加するが線維数は増加しない。心胸比は最大でも50%程度である。

 心臓のポンプ機能は正常か増大、ミオシンのATPase活性も正常か亢進、肥大の過程で生じた形態の異常は可逆的である。運動負荷時の最大心拍数や最大動静脈酸素較差は健常者とあまり変わらないが最大酸素摂取量が高い。最大酸素摂取量の規定要因は最大1回拍出量と最大心拍出量である。心拍出量とは1回拍出量と心拍数の積であるが最大心拍数は健常者と大きな差がないので1回拍出量の差に依存している。1回拍出量は心室の駆出分画により規定される。駆出分画とは左室容積の何%が駆出されるかを表す指標で正常は60%以上で運動負荷時に大きく増加する。

 また心臓は形態的には求心性か遠心性の肥大に分けられるが拡張末期における左室後壁圧を左室内径の2倍で割った値(相対的左室壁圧RWT)が0.44より大きい場合を求心性肥大、小さい場合を遠心性肥大と呼ぶが、スポ-ツ心は遠心性の左室肥大を呈した後、徐々に壁圧の増大による左室心筋重量も増加してくる。ランナ-などの有酸素系の運動種目では心拡張、短距離などの無酸素系運動種目では心肥大が主となる。安静時には前者で収縮機能の低下傾向、後者で拡張機能の低下傾向を示すが運動時には両者とも正常化する。心電図所見の特徴は洞性徐脈、P-R延長、不完全右脚ブロック、左側胸部誘導の上弯性ST上昇、各種不整脈などがある。これに対し病的な心筋肥大は上とは逆に心機能の低下、ミオシンATPase活性の低下、心筋肥大は肥大の刺激が消失しても完全には正常化出来ない。形態的には求心性肥大である。 

 運動時の利点ばかりではなく非運動時、安静時に不整脈、徐脈により血液の流れが乱れやすく虚血、再潅流を起こしやすい等不都合な点も多い。虚血、再潅流はまた活性酸素をも生む。生理的範囲を越えたoveruse syndoromeでは問題がある。従ってスポ-ツ心の全てが生理的適応で正常と言えない面もあり運動中突然死の原因となる場合もある。

 車に例えて言えば通常はコンパクトカ-で小型エンジン搭載、運動時に高速回転、高出力が可能であれば性能は勝るとも劣らない

参考文献:www2.ocn.ne.jp/~ikedama/kiso/sinzou.htm



September 27, 2002

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